京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」10月号の挿入画を担当しました!

10月のニューズレター記事は高橋知子助教 による(国際制度論研究)による「「南極」を世界がデザインするとき」。紹介されたのは、M. J. ピーターソンの「 Managing the Frozen South: The Creation and Evolution of the Antarctic Treaty System」( University of California Press、2021年。邦訳は未刊行)。

南極条約の成り立ちとその前後に注目することで、国際制度のあり方を提言することに挑んだ書籍。南極条約の締結前、締結、締結後とそれぞれどのような課題があり、どのようにして諸外国がその課題に取り組み意見をまとめていったかが丁寧に記述されています。

極寒で未開の僻地であった南極。いくつかの国の探検隊が踏査したことはあっても、重要性はあまり認識されず領地として管理しようとした国はありませんでしたが、時代が進むにつれ、領土化の意欲を見せたり、天然資源の採取に興味を示したり、各国様々なモチベーションを持って南極の管理に手を伸ばしはじめます。各国の利権や要望が渦巻くなか、国際レジームを定めて条約締結を進めていくことがいかに困難なものか、読みながら思わずうーんと唸ってしまいました。

時代は第二次世界大戦後まもなく。続く冷戦や、大戦で負った大きな傷の回復にそれぞれの国が多くの時間と労力を割いていた中、それでも各国協働して国際条約を結んだそのバイタリティには感嘆します。しかし、そうしてようやく締結した条約も、加盟国が増えたり新たな環境問題の出現により、その後も何度も改訂を重ねています。著者はそうした国際制度の考え方、作り方、あり方について自身の考えを述べており、これから国際制度論を研究する人はもちろん、様々な背景や軋轢・確執・利権のある関係者同士が共通の制度をゼロから作るとき、一体どのようなことが生じえ、またどのように対処していくと良いのか、そんな気づきが欲しい人にもぜひ読んでもらいたい本だと思いました。

「南極」を世界がデザインするとき – CSEAS Newsletter

高橋 知子(国際制度論研究) <br> 国際制度論研究では、世界の異なる国や企業、非国家主体が、いかに協力して、人類に資する制度をデザインすることができるのかを…

◆挿入画解説◆

ペンギン達は各国の象徴として描きました(初期の条約締結国12カ国にちなんで12羽)。ペンギン達は三角錐の塔(南極管理という議題の重要性)の上に置かれた土台(国際レジーム)の上で南極条約というイグルーを協働して築き(締結し)、また改築(修正・改訂)しています。

イグルーの周りでは、各国のもつ利害関係(interest)、連合政治(coalition)や主権の主張(sovereignty)を表した雪玉がぐるぐると回っており、それぞれが均衡することで南極条約・国際レジームが成立している様を描いています。

空中から落下傘で降下するペンギンは、第三国や新たな環境問題など、現状均衡を保っている土台に着地することでその均衡を変えうる要素の存在を表しています。周囲に吹き土台を揺るがす風もまた、その均衡を崩しかねない各国の情勢や世界の潮流を示唆しています。