京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」9月号の挿入画を担当しました!
2024年9月のニューズレター記事はウルスラ・フレイ氏(地域研究、ジェンダー研究、メディア研究、社会学)による「異文化コミュニケーションを鍛える」。紹介されたのはエリン・メイヤー(Erin Meyer)氏のThe Culture Map: Breaking Through the Invisible Boundaries of Global Business(PublicAffairs、2014年。邦訳『異文化理解力─相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』田岡恵監訳、樋口武志訳、英治出版、2015年)。
本著は、異なる文化で育ってきた人同士が協働する際に起こりうる様々な問題に対して、どのようにすれば不和や軋轢を可能な限り避けながら人間関係を構築することができるか、具体例を交えながら明快に提言しています。
ネガティブなフィードバックをどのように伝えるか、意見が対立した時にどのように反応するか、時間に対する捉え方はどのようなものか。文化により標準とする考え方が異なることはもちろん理解できますが、文化的な差異以前に物事に対する見方や考え方は一人一人違っていて当たり前で、自分が相手の言動に感じる違和感も文化的な差異からくるものではなく、その人自身の性格や個性によるものなのではないか。そんな疑問を感じながら本著を読み始めた私は、次の著者の指摘になるほど確かにそうだと思わず頷いてしまいました。
「文化の差は関係がないと思って人と接すると、自分の文化のレンズを通して相手を見ることが標準となってしまい、それをもとに判断をしたり、判断を誤ったりしてしまう(下線引用者)」
異なる文化圏出身の方とのコミュニケーションに違和感を感じる時がある。それは無意識に、自分の文化のレンズを通して相手を見ることによって生じたものではないだろうか。そのように客観的に考えられるようになると、違和感の正体が相手の性格や個性からくるものであると性急な判断をせず、相手の文化を尊重しながら良好な関係性を築くことができるようになるのではないかと感じました。
海外の方とお仕事をする機会のある方はもちろん、インバウンドが盛んになり日常的に海外の方と接する機会の増えた昨今、ぜひすべての人に手に取ってもらいたい本だと思います。
◆挿入画解説◆
自国の文化の中にいる者は、水の中の魚が水の存在に気がつかないように文化の存在にも気がつきにくいという著者の指摘に着想を得て、異文化出身者同士の交流を淡水と海水を行き交う魚に見立てて表現しました。
通りの建物の壁には「水の調子はどう?(本文の例え話※)」「違いに気づこう!」というポスターが貼られてありますが、淡水と海水を行き来する魚たちはあまり注意を払っていません。でも中には淡水・海水のどちらにも適応できるサケのマスクを被って淡水域の友人に会いに行く海水魚もいます。サケのマスク交換所に「推奨!」と記載したプレートが掲げてあるように、淡水と海水には違いがあるのだと理解して、それに自らを適応させることが大事であるということをイラスト全体を通して表現しています。
※水の中の魚が別の魚に対して「水の調子はどう?」と尋ねたところ、尋ねられた魚がそもそも水の存在自体に気がついていなかったという話。