京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」11月号の挿入画を担当しました!
2025年11月のニューズレター記事は翟 亜蕾氏(開発経済学、地域研究)による「CSEASの会議室から:少子化随想」。紹介されたのは、『誰も取り残されない:なぜ世界にはもっと子供が必要なのか』(原題No One Left: Why the World Needs More Children、Paul Morland、2024年、邦訳は未刊行)。
本書は、人口減少という地球全体で起こっている問題について、各国の出生率の推移や政策・文化・宗教などの切り口から、その解決策について論じています。
人口減少は自然の流れとして容認すべきという人々もいるなかで、著者はそれでも、人類が人類としてその独自の文化や発明を享受し、民族の多様性を守るためには、人類の存続が必須であると主張します。
人口減少の要因となる出生率の低下は、女性の社会進出が進んだ国や高等教育を受ける女性の割合が増えた国において起きやすい事象ですが、そのような社会で女性が個人の生き方を主張しながら、それでも出生率を上げて行くためにはどうしたらよいのか。
筆者は、現在多くの国で採用されている移民の受け入れは、長期的な意味で人口減少の解決策にはならないとした上で、自国内における対応、例えば技術革新を進めたり、子育て世代に手を貸し、子どもを温かく迎える社会の雰囲気づくりをしたりといった手段が、出生率の増加につながる手段になるのではないかと述べています。
本書の文中では、「Japan」や「 Japanese」の文言も多数目につき、日本が人口減少問題の(悪い意味での)モデルケースとなっていることも認識させられます。高額な社会保障や年金制度、移民受け入れの実態が浮き彫りになる現在の日本において、これら諸問題を改善していこうと考えるならば、人口減少に向き合うことは避けては通れないものなのでしょう。本書とエッセイを読むことが、その第一歩となるかもしれません。
◆挿入画解説◆
少子化が進む現代において、エッセイに記されているような、仕事場でも子どもを温かく迎える雰囲気と、少数の子への投資に舵を切らざるを得ないような状況が併存する状況を画面の両端に描きました。
政府の政策や文化、宗教など、様々な要因のもとで少子化が進んでいく状況がありますが、そのようななかで、もし私たちが身近な子育て世代(子、きょうだい、同僚、地域住民など)に手を貸し、支え、子どもを温かく迎えるような雰囲気作りを社会全体でできたとしたら、進行する少子化に対する一つの解決策になるのではないかという書籍著者の考えを、赤ちゃんを運ぶコウノトリが、北風ではなく太陽の方向に向かって飛んでいくことで表現しました。人間はコウノトリにもなりえるし、太陽にも北風にもなりうるものだと感じています。

