京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」12月号の挿入画を担当しました!

2025年12月のニューズレター記事は竹田 晋也氏(森林科学)による「あこがれの北の果て」。紹介されたのは、『植物巡礼─プラント・ハンターの回想』(F. キングドン-ウォード著、塚谷裕一訳、岩波書店、1999年)

本書は、プラント・ハンターである著者がミャンマーやタイなどの熱帯林や山地で出会った固有種を、発見時のエピソードとともに記述する探検紀行本です。

プラント・ハンターという珍しい職につくまでの経緯を記した冒頭文に引き込まれ、各章に登場する白黒の風景写真や生物写真が、まだ見ぬ世界への想像力を一層引き立てます。

エッセイ著者は、「本を読んで想像した場所へのあこがれが、つぎの世代の調査研究の原動力になっていく。古典とよばれる探検紀行本には、そうした不思議な力が宿っています。」と、そう記します。

確かに「あこがれ」は、人を突き動かす最も純粋な原動力のひとつに違いありません。皆様にも、若い時分に読んだ際に強いあこがれを感じた本が、きっと一冊はあるのではないでしょうか。

2025年が終わる前に、もう一度その本を読み返してみるのも一興かもしれませんね。

あこがれの北の果て – CSEAS Newsletter

竹田 晋也(森林科学) 高校時代、机に向かう受験勉強が嫌になると、私は決まって探検紀行本を手に取りました。アプスリー・チェリー-ギャラードの『世界最悪の旅』で…

◆挿入画解説◆

竹田先生の研究者人生とウォードの『植物巡礼』を重ね合わせる形で描きました。植物探検の世界に憧れ、その道を進みつづけた研究者人生は、きっとその折々で、竹田先生に素晴らしい景色を見せてくれたのでないかと思います。

次の世代の誕生を予感させる朝日を見つめる竹田先生を、その道の終わりに描きました。四角いラベルの貼られた植物は、『植物巡礼』に記述されている植物です。

画面右下の伝書鳩は、その人を研究者人生へと誘うきっかけを暗に示しました。ウォードの場合は学者からの手紙、竹田先生の場合はウォードをはじめとする古典の探検紀行本がこれであったのかなと思います。