京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」7月号の挿入画を担当しました!
7月のニューズレター記事はTheara Thun連携助教(歴史学、カンボジア/東南アジア研究。香港在住)による「歴史研究の道しるべ」。紹介されたのは、トンチャイ・ウィニッチャクン教授による『地図がつくったタイ──国民国家誕生の歴史』(石井米雄訳、明石書店、2003年)。
「一国の地図を作る」という一見単純な作業が、タイの場合は国境地域の民族分断やタイ国民の意識の強化を引き起こしたという点について大変丁寧に綴られています。果たしてタイだけに当てはまることだろうかと、他の国家についても事例を調べてみたくなる、国の成り立ちについての好奇心をそそられる大変興味深い本でした。当該記事は下記からご覧いただけます。
◆挿入画解説◆
シャム時代の想像上・観念上の宇宙観による地理認識(イラスト左図)から近代的な測量による地理認識へと移行することで、タイの国境が明確に決定されただけでなくタイ国民という意識が強く芽生えたことを、タイの地図中央に国王・パゴダ・国旗をもつ国民(対するのは国境線が引かれたことで強く認識されるようになった外敵)を描くことで表現しました。一方で、測量により機械的に国境線を引くことで、国境に"くに"をもっていた小規模な首長国が分断され消滅するにいたったことも暗に示しています。
こうしたタイの地図作成は欧州列強のフランスと英国による植民地支配が東南アジア諸国に及んでいたことが背景としてあり、両国の国旗とタイの国旗、そして剥ぎ取られつつあるシャムの地図を描くことで、地図作成によりシャムが消失し新たにタイが国として誕生したことを表現しました。