京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」2月号の挿入画を担当しました!

2025年2月のニューズレター記事は山崎 渉氏(食品衛生学、人獣共通感染症学、動物感染症学)による「牢、域、街」。紹介されたのは『スピルオーバー─ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのか』(デビッド・クアメン著、甘糟智子訳、明石書店、2021年。原著はSpillover: Animal Infections and the Next Human Pandemic、2012年)と『新型コロナはどこから来たのか─国際情勢と科学的見地から探るウイルスの起源』(シャーリ・マークソン著、高崎拓哉訳、ハーパーコリンズ・ジャパン、2022年。原著はWhat Really Happened in Wuhan: A Virus Like No Other, Countless Infections, Millions of Deaths、2021年)。

いずれも人獣共通感染症(ズーノーシス)の感染拡大を取り扱った書籍。『スピルオーバー』では、未知の感染病が観測されてから、その原因を探り、対策を講じるまでの一連の流れが臨場感たっぷりに綴られます。

原因はウイルスなのか、ウイルスだとしたら普段はどこに潜んでいるのか、媒介する動物は何なのか、ワクチンはどのように製作されるのか。時代から時代、ラボ外からラボ内へと繋がる調査の輪。特効薬の開発へと繋がるその輪の中には、時間と空間と業種をまたいだ多くの人間の不断の努力と熱意、そして協力があることに気付かされます。

『スピルオーバー』がウイルス調査・ワクチン開発の関係者に焦点を当てたものであるのと異なり、『新型コロナはどこから来たのか』は、国家の首脳陣やWHOなど、人間社会の思惑や国家間利益などにも踏み込み、感染症拡大の裏で起こっていた情勢を暴き出す書籍となっています。これだけの関係者に聞き取りを行い、一冊の本としてまとめ上げた著者の執念に敬服する気持ちでページを捲りました。

日常に潜む「感染症」。感染拡大が起きた時に関わるすべての人たちの働きやその思いが、本書を読み進めるにつれ温度をともなって身に迫ります。

病原体と人類の交差点:パンデミックの起源を探る旅 – CSEAS Newsletter

山崎 渉(食品衛生学、人獣共通感染症学、動物感染症学) 病原体と私の出会いは20歳になって間もない1993年1月、ネパールからインドへの夜行バスの中で始まりました。村々…

◆挿入画解説◆

人間の活動が野生動物との接触頻度を増やし、未知の病原体(エボラ・HIV等)のスピルオーバーを引き起こしている現状を画面左下のブルドーザーで表現しました。

画面右はスピルオーバーの発生を報道するメディア、混乱する病院とワクチンなどの薬剤開発を進める医療現場を描いています。

画面中央はスピルオーバーの媒介動物を突き止める過程を描写したものです。

洞窟内の試験官は新型コロナウイルス研究所起源説を暗示しています。

こうしたスピルオーバーの全貌は一般市民には把握しがたく、気がついた時には病気が蔓延しているという状況を、全てが地下空間で進行し、媒介動物だけが街に向かって飛んでいく様子で表現しました。