京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」9月号の挿入画を担当しました!

9月のニューズレター記事はMiriam Jaehn学振特別研究員(難民・避難民研究、アジア研究、社会・文化人類学)による「川と海のほとりにて」。紹介されたのは、ジェイソン・デ・レオンの「Land of Open Graves: Living and Dying on the Migrant Trail」(2015年。『剥き出しの墓のある土地−移民たちの生死の人類学』邦訳は未刊行)。

邦訳は刊行されていないため英語の原著のみとなりますが、分かりやすい文章で会話文も多く、インタビュアーとのやり取りが現地の写真を含めて臨場感豊かに記述されているため、文化人類学や難民に関する専門知識がなくても問題なく、物語のように読み進めることができます。書籍では、難民たちの遺物や遺骨、遺体の写真が包み隠さず掲載されています。モノクロであるがゆえに死の匂いがぬぐいきれず、実際に目の当たりにした際の壮絶さ、砂漠環境の過酷さ、凄惨さに対する想像力を掻き立てます。

著者が着目したのは、米国がメキシコの間に広がるソノラ砂漠を不法入国対策として意図的に利用していること、そしてその結果として「死の暴力」を生み出しているという点です。灼熱の砂漠で越境を試みる中で息絶えた難民たちの現実とその家族の悲しみに密着し、砂漠の遺骨に名前と人生を与える著者。不法入国という行為を選択せざるをえない社会環境・経済環境の現状にも言及した原著は、ぜひ一度読んでみてもらいたいと思いました。

川と海のほとりにて – CSEAS Newsletter

ミリアム・ジェーン(難民・避難民研究、アジア研究、社会・文化人類学)<br> 東南アジア地域研究研究所(CSEAS)で研究生活を送っていると、京都の四季折々の風景…

◆挿入画解説◆

国境を越えようとする移民達の入国ルートを意図的にソノラ砂漠へと向けることで、米国がその過酷な自然を不法入国防止策として利用している(Prevention Through Deterrence: PTD)現実を、有刺鉄線で限定された入口から砂漠へ足を踏み入れる人々を描くことで表現しました。砂漠には低木と草ばかりで強い日差しが降り注ぎ、目指す米国(ビル群)ははるか彼方にあるという状況を図示することで、移民達の旅が過酷なものであることを暗に示しました。