京大東南研(CSEAS)の月刊ニューズレター「かもがわ便り」12月号の挿入画を担当しました!

12月のニューズレター記事は速水洋子教授(文化人類学、東南アジア研究)による「出張先で出会った本たち」。紹介されたのは、パスカル・クー・トゥウェの『緑の霊の宿る大地から』(2003年、原題From the Land of the Green Ghosts、邦訳は未刊行)と、シャルメイン・クレイグの『ミス・ビルマ』(2017年、原題Miss Burma、邦訳は未刊行)

2冊の書籍に共通するのは、ミャンマーの山岳地帯に住む少数民族を出自として持つ主人公の人生に焦点を当て、ミャンマーの歴史の流れに翻弄されつつも自らの進む道を選び、確かに人生を紡いでいるその生き様を丁寧に記述している点です。

第二次世界大戦や軍事政権、民主化運動など激動の時代として外野から語られるその時代にも、一人の人間として人間関係や社会に悩み、考え、生きていた人がいたのだということを改めて気付かされる書籍でした。

興味のある方はぜひ、この機会に読んでみてはいかがでしょうか。(特に"From the Land of the Green Ghosts"は最初に少数民族の暮らし・慣習が丁寧に記述されていて、興味深く読み進めることができました)。

出張先で出会った本たち – CSEAS Newsletter

速水 洋子(文化人類学、東南アジア研究)<br> 出張先の空港で搭乗便の待ち時間に書店をぶらぶらして、幾度か「これは見つけもの!」という本との出会いを経験した…

◆挿入画解説◆

ミャンマーの田舎風景を想起させる田圃の一方に、自らの出自である少数民族の伝統や慣習を、もう一方に軍事政権や社会主義を映し出し、相入れない二つの環境の中で揉まれながら進む少数民族たちの運命を表現しました(動物の足跡はアニミズム、道端の枝はキリストの十字架を意味)。左の田圃から出る足跡は裸足で、右の田圃から出て都市部へ向かう足跡は靴を履いており、民族を離れより大きな世界の慣習に適応しながら進んでいく様を示しています。第二次大戦やその後続く激動の時代のミャンマーで、確かに一人の人間として人生を紡いでいる人たちがいるという事実と、民族・社会・国はそうした一人一人の人間によって構成されているのだということを改めて強調するために、二つの世界を映し出す田圃の分岐の手前に裸足の人間(少数民族の人)を描きました。